「ほらほら、お兄ちゃん、早く行かないと夏祭り始まっちゃうよ」 ………もうっ、お兄ちゃんてば、そんな嫌そうな顔しないでよ。せっかく浴衣姿のかわいい女子中学生がこうして夏祭りデートに誘ってるんだよ? もう少し嬉しそうな顔、できないの? それよりほら、この浴衣、似合ってるかな………? エヘヘッ………、今年は奮発して、新しいの買っちゃったんだ♡ それにね、やっぱり浴衣にはポニーテールかなぁ………って思って、ポニーテールにしたんだよ! どお? このうなじの辺り、そそられない? あーっ! 何よその心のこもってない投げやりな応えかた! まったく失礼しちゃうなぁ………。こういうときはもっと素直に褒めるべきなんじゃないの? まったく………乙女心をなんだと思って………ってそこ笑うところじゃないから! ………もーっ、いっつもそうやってはぐらかすんだから……… ──やっぱり人、いっぱいいるね。これじゃはぐれちゃ………あっ、お、お兄ちゃ………いきなり手を握ってそんなにそばに寄られたら………恥ずかしいよ……… ──へーっ………お兄ちゃん、ボクが人混みにぶつからないように、ちゃんとエスコートしてくれてるんだ………やっぱり………優しいな………あっ、見てみて! もう花火、始まってるんだぁ。うわーっ、大きくてきれい! ………えっ? あっ、うん。向こうの方が、もっとよく見えるよね………。それにこんなんじゃ身動きが取れないし………。 うわーっ、すごいすごい。本当に空に花が咲いているように見える! キレイ………♡ お兄ちゃん、よくこんな場所知ってたね。 ………あれっ、お兄ちゃん………あそこのカップル………キス………してるよ………? 打ち上げ花火をバックにキスなんて、なんかロマンチックだよね……… ………えっ、そっ、そりゃあボクだって女の子だもん………ああいうの、ちょっとは憧れちゃうよ………えっ、あっ、うん………そうだね……… ──お兄ちゃんのバカ………本当はボク、お兄ちゃんと………。やっぱり………直截言わなきゃ、伝わらないのかな………? ………あっ、あのね、お兄ちゃん………本当はボク、お兄ちゃんと………えっ、あっ……… ──あーあ、花火、終わっちゃったね………えっ、あっ、なんでもないよ、うん。たぶん、空耳じゃないかな、アハハ………はぁ………。 来年こそは、花火をバックにお兄ちゃんとキスできるといいなぁ……… Fin. |