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今日は夏休み最後の土曜日。夏休み前のボクの予定ではそろそろ夏休みが終わった後の学校へ行く準備でもしようかなぁ、って思う頃なんだケド……。 「なんで今頃になって出てくるのかなぁ……」 バッグの中から出てきた一冊のドリル帳。パラパラめくっても当然どこにもボクの答えは書かれてなくて…… 「はぁ〜〜ッ、最悪……」 今年こそは絶対に夏休み中に宿題を終わらせよう、って思ってたのに…… 「こうなったら……しかたないよね」 ボクはそのドリルと筆記用具を持って部屋を出た。 ふたりきりのべんきょうかい
1 コン、コンッ…… 「ね、ねえ、お兄ちゃん、居る?」 『ん、帆乃香か? ちょっと待っててな』 ドア越しにお兄ちゃんのくぐもった声が聴こえてくる。 しばらくするとドアが開いて、そこからお兄ちゃんが顔を覗かせた。 「で、どうしたんだ? 宿題で分からないところでもあったのか?」 う゛っ、やっぱりお兄ちゃん、鋭い。 「う、うん……。ちょっと教えて欲しいんだケド……」 「ん、じゃあ入りな」 そう言ってお兄ちゃんはドアを開けてボクを部屋の中に入れてくれた。 部屋の中ではお兄ちゃんが、大きなテーブルの上に置いてある本とかをどかしてテーブルについた。ボクもお兄ちゃんの隣に腰を下ろす。 「で、どこがわからないんだ?」 テーブルの上にドリルと筆記用具を広げているボクにお兄ちゃんがやさしく声をかけてくれる。ゴメンね、お兄ちゃん、「どこか」じゃないんだ…… 「ぜ、全部……」 「……はぁ?」 「で、でもね、本当に全部わからないわけじゃなくて……」 素っ頓狂な声を上げるお兄ちゃんに、ボクは今日初めてこのドリルがバッグの中から出てきたことを説明した。いくらなんでもドリル一冊丸ごとわからなくて今までそのままにしていたなんてお兄ちゃんに思われたら、さすがにお兄ちゃんでも怒るだろう。 「……そっか、じゃあ仕方ないな」 ボクの話を難しそうな顔をして聞いていたお兄ちゃんが言った。 「え? じゃあ……」 「でもわかるところはちゃんと自分でやるんだぞ。ここで見ててやるからわからないことがあったらやり方だけ教えてあげるから」 「う、うん、それでもいいよ。ありがとう、お兄ちゃん」 「お、お礼はいいからさっさとやりな。もうあんまり時間ないんだから」 ……あれ、真っ赤になっちゃって、もしかしてお兄ちゃん、照れてるのカナ? でも、やっぱりお兄ちゃんって優しいナ…… よ〜し、こうなったら、頑張るそぉ! 2 ボクがせっせとドリルの問題を解いている間、お兄ちゃんは本当にずっとボクの隣で宿題を見てくれていた。部屋を出て行ったのは麦茶を持ってきてくれたのと、おトイレに行ったときだけ。ボクがわからないところがあると、さすがに答えは教えてくれなかったケド、ボクにもわかるように問題の解き方を丁寧に教えてくれた。やっぱりお兄ちゃんって優しいナ…… でも…… 「ねえ、お兄ちゃん」 「ん、どした?」 「……ゴメンね。ボクの宿題なんて見ててもつまらないでしょ?」 「そんなことはないよ」 そう言ってお兄ちゃんは笑ってくれた。 「帆乃香の成績がどのくらいなのかがわかるし、それに自分がどれだけ覚えてるかもわかるしね。僕より帆乃香の方が早く解けた問題もあったから少しビックリした」 「ホント、お兄ちゃん?」 「でもまあ……問題が解けて嬉しそうな顔をしたり考え込んで悩んでるお前の表情見てるのが一番面白いけどな」 「……おにーちゃーん」 ……もうっ、せっかく「カッコいいなぁ………」と思ってたのにぃ…… でっ、でもそれって、ずっとボクの宿題じゃなくて、宿題をやっているボクのことを見てたってこと、だよね? うわぁ……、そう思うと、なんかドキドキしてきちゃったよ…… でもドキドキばっかりしてもいられないよ。早いとこ宿題終わらせないとねっ。 「あっ、ねえねえお兄ちゃん、この問題なんだけどさ……」 「……えっ? あ、ああ、これね」 少し慌てたように反応して、宿題の問題を見ているお兄ちゃんにボクは少しイジワルすることにした。 「……ボクの胸、どおだった?」 「……えっ?」 「エヘヘッ、お兄ちゃんがさっきからボクの胸元とかフトモモをちらちら見てたの、ちゃんと気付いてたよ。……お兄ちゃんのえっち」 ボクが目を細めながら言うと、お兄ちゃんが恥ずかしそうに笑いながら小さな声で「ばれてたか」ってつぶやいた。やっぱりお兄ちゃんも「オトコノコ」だから、女の子の、たとえ妹のボクの胸とかフトモモでも、気になるのカナ……? 「で、お兄ちゃん、ボクの胸どうだった?」 「……普通そんなこと女の子から聞くようなものじゃないと思うけどな」 「ちらちら見てたんだから感想くらい聞かせて欲しいナ」 「……Bカップくらいか?」 「むー、Cカップはあるもん。……ギリギリだけど。それにまだまだ発展途上なんだよ」 「わかったから無い胸を張るのはやめれ。ブラが透けて見える」 「ヘヘッ、お兄ちゃんになら見られても恥ずかしくないもーん」 うりうり。 ボクがお兄ちゃんに胸を突き出すとお兄ちゃんはちょっと迷惑そうな顔をしてたケド、満更でも無さそうだった。 その間にもお兄ちゃんはボクがわからなかった問題をささっと解いてしまい、その問題の解き方を教えてくれた。……嬉しいケドなんか無視されたような気がする…… 「じゃあそろそろ休憩しようか」 お兄ちゃんがそういったのでボクたちはちょっとだけ休憩することにした。 3 休憩時間が終わって、ボクはまたドリルを始めた。お兄ちゃんは相変わらず隣でボクの宿題を見るフリをしてボクの胸元やフトモモをちらちらと見ている。……お兄ちゃんはちゃんと宿題を見てるって言ってるけど。 でもボクの疑問にちゃんと答えてくれるから、やっぱりちゃんと見てくれてるのカナ…… でもなんかつまんない…… 堪らずボクは上目遣いでお兄ちゃんを見上げた。 「ね、ねえ……、お兄ちゃん……?」 「ん、どうした? 帆乃香?」 「ふたりっきりだよ? ……何もしないの?」 ──ブッ!! 「あーーっ!! 汚いな、もう!」 お兄ちゃんが突然コップの中に麦茶を噴き出した。そしてじろりとボクのほうを睨む。 「……突然何を言い出すかな、お前わ……」 「えー、だって、こんな時間に若い男女がひとつの部屋に二人っきりなんだよ? 普通は何かあると思わない?」 「……思わないし何も起こらない。そんな無駄口たたいてる暇があったらさっさと先に進めろ。まだ半分も終わってないんだからな」 「むー。さっきから人の胸とかフトモモジロジロ見てたくせに……。本当は触りたいんじゃないのぉ?」 いたずらっぽく上目遣いでお兄ちゃんの顔を覗きこんだケド、お兄ちゃんは白けたような顔をしていた。 「はいはい、じゃあ終わったらいくらでもお前の好きなようにしてあげるから先に進めような」 そういってぽんぽんとボクの頭を撫でる。むー、すぐそうやってボクのことを子ども扱いするんだから……。でもたしかにそんなことやってる時間はないし、先に宿題を終わらせないとね。 「……とはいえもうこんな時間だしな。今日はもう寝て明日続きやるか。明日一日あればなんとか終わるだろ」 「えー、まだ大丈夫だよぉ。だから早く続きやろうよぉ」 「やるのはお前だろ。でも無理だけはするなよ。眠かったらちゃんと寝るんだぞ」 「うんっ、ありがとう」 ボクがお礼を言うとお兄ちゃんはくすっと微笑みながら部屋を出て行った。 4 「……のか、帆乃香」 う、うーん…誰、ボクの体を揺らすのは…… お願いだからあと5分だけ… ……ってあれ? ボクが目を覚ますと、目の前にはボクの顔を覗きこむお兄ちゃんの顔があった。そして周りを見ると見慣れたお兄ちゃんの部屋。どうやらボクはお兄ちゃんの机で宿題をしているうちに寝てしまい、そのままお兄ちゃんのベッドに寝かされたみたい。 ってことはお兄ちゃんがベッドまで運んでくれたってこと……? ちょっぴり恥ずかしかったけど、やっぱり気になったからボクはお兄ちゃんに聞いてみることにした。 「ね、ねえ……お兄ちゃん……?」 「ん?」 「もしかしてお兄ちゃんが……ボクのことをベッドまで運んでくれたの?」 するとお兄ちゃんも少し恥ずかしそうに微笑みながら、 「ん、まあそのままじゃあ風邪引いちゃうと思ったしな。着替えさせるのはさすがにやめたけど」 「何時ごろ寝ちゃってたの?」 「分からんけど3時には既に突っ伏してたぞ」 「お兄ちゃんはどこで寝てたの?」 「……お前の隣で寝てたけど」 「ボっ、ボクが寝ている間にヘンなことしなかった?」 「……何もしてないよ」 ボクの矢継ぎ早な質問に疲れたのか、お兄ちゃんはややげっそりした表情で答えた。 「……それよりもっと他に気にすることはないのか?」 「あっ、そういえば宿題は?」 お兄ちゃんの言葉に慌ててボクはベッドを飛び出し机に向かった。するとそこにはところどころにルーズリーフがはさまれたやりかけのドリル帳が開かれたままになっている。そのルーズリーフには、ボクが間違えた箇所の正しい問題のとき方とか考え方がお兄ちゃんの字で書かれていた。 「昨日見れなかったとこはだいたい目を通しておいたけど……、やっぱり間違いが多いな。 ま、残り三分の一くらいだから今日中にはなんとか終わるだろ」 そういってお兄ちゃんがボクの頭を軽くぽんと撫でる。ううっ……やっぱりやってくれてはいなかったんだね……。でもやっぱり宿題は自分の力でやらなきゃいけないよね。 「ね、ねえ、お兄ちゃん……」 「ん?」 「今日もボクの宿題……手伝ってくれる?」 ボクが聞くと、お兄ちゃんはボクの頭をぽんと撫でた。 「当たり前だろ? ちゃんと最後まで面倒見てやるからちゃんとやれよ」 やっぱり一日じゃ終わらなかったケド、今年はどうにか夏休み中に宿題を終わらせることができるみたい。やっぱり大変でも宿題はちゃんと毎日こつこつやらなきゃね。あっ、でも、こんな風にお兄ちゃんがつきっきりで教えてくれるなら、毎日の勉強がもっと楽しくなるのにナ……。 Fin. |